外は雨。春の夜。
恋について思うことを書いてみようかと思う。
わたしは、ご飯が食べられなくなる恋と、おいしく食べられる恋をしたことがある。昔のはなしだ。
好きな人と会うとき、食事をするのが苦手だった。いわゆる緊張してのどを通らないというやつだ。
味もしないし、話すのと聞くのと食べることを同時にうまくこなせない。
意識して一生懸命食べないと、全然お皿の上のものが減らなかった。
あわない時も、食欲が湧かなかった。
そのひとをおもうと苦しい。恋心で、おなかと胸がいっぱいになっていた。
そもそも他人と食事をすることが苦手なのかもしれない。同性はまだいいのだが、異性となるとはなはだしんどい。
だから、半分以上残してしまうことが多かった。申し訳ないけれど。
実は今もその傾向はある。
話が逸れた。
好きになってもご飯が食べられるし、
一緒に食事をしても、楽しく、味がわかっておいしいと感じ、ちゃんとのどを通り、たくさん残さずに済んだひと、とは後に結婚をした。
結婚したら基本的には毎日ご飯を一緒に食べるから、そういう人と一緒になれてよかった。
というか、いつまでも緊張が解けず、ご飯がのどを通らないような人とは、結婚するのは難しいのかもしれない。あたりまえだ。
それでも、どちらも同じ恋心。なんだと思う。
いつもの自分のように振る舞えずぎこちなくても、あのときたしかにわたしは、その人のことを好きだった。
なつかしく、いまもふと、おもいだす。